11/25。
11/20に「Wall Street Journalを読む会」の第15回の開催がありました。(正式名称:【最終回】第15回 お金の知識が身につく英字新聞を読む朝会!英語脳を鍛えよう! )
以前からお知らせしていたとおり、今回で最終回になります。たいへんマニアックな会でしたが、一年以上にわたって続けてこられたのは皆様のおかげです。多くの方々にご参加いただき、本当にありがとうございました!
今回の記事:今年に入って投資家も企業トップも大型の長期プロジェクトを敬遠し、目先の利益をしっかりあげる短期思考が鮮明になってきました。その理由とは?
Investors Rekindle Love Affair With Short-Term Success
(注:有料記事なので先頭しか見られません)
いまリスキーな事業に賭ける必要がない理由
これまでは多くの長期プロジェクトに資金が流れ込んでいましたが、2022年終盤のいま、投資家は再び短期投資にフォーカスするようになっています。結果、企業トップも大型プロジェクトに対する資金投入を敬遠するようになりました。なぜこのような流れになったのでしょうか?
それは、今年に入ってからのFRBの積極的な利上げが原因です。
Put simply, why bet on risky ventures that might possibly pay off in 10 years when you can earn 4.5% on a totally safe one-year T-bill? Interest rates are strongly encouraging investors to have a shorter-term outlook.
The Wall Street Journal:Investors Rekindle Love Affair With Short-Term Success
金融引き締めによって金利が急上昇したおかげで、1年国債でノーリスクで4.5%のリターンが得られるようになりました。だったらどうして今さら10年後に資金回収できるかも怪しいようなベンチャー事業に賭ける必要があるのか?という、非常にシンプルな理由で市場に短期思考が戻りつつあります。
実際、去年あたりから、採算のとれないスタートアップ企業の株価が大きく下げました。具体的にどんな事業かというと、オンラインのライドシェア、宇宙ツーリズム、オンラインでの犬の散歩ビジネス。。。といった感じです。
今まではカネ余り状態で、採算のあやしいミーム株に資金が投入されていたものの、それらの流行り株がクラッシュした形です。(ちなみに犬の散歩事業はソフトバンクが投資してたとか)
暴落したのはミーム株だけではありません。先日も、有名なメタ(旧フェイスブック)の株価も1日で25%も下落するなど大きな動きがありました。マーク・ザッカーバーグが、いつリターンが見込めるか分からない仮想現実の開発を推し進めるという主張を貫いたためです。いま投資家はそんな不確実な長期プロジェクトに資金を出したいとは思わない、ということでしょう。
ムーンショット事業が敬遠される
とはいえ、いままでそのような大型の長期プロジェクトに資金が流れ込んで株価を押し上げていたのも事実です。それもまた過去の金利の話と大きく関係しています。
When rates were at zero and the Fed was buying government bonds, investors felt they had to take more risk to earn a return. Companies could borrow for less than ever before and as memories of the 2008-09 global financial crisis faded, shareholders encouraged those with what were perceived as good ideas to spend big to try to make “moonshot” plans come good.
The Wall Street Journal:Investors Rekindle Love Affair With Short-Term Success
アメリカも金融緩和によって、金利がゼロだった時期が続いていました。その頃の投資家たちは、リターンを得るためにもっとリスクを取らなければなりませんでした。また、企業の側もかつてないほどの低金利で借り入れできたため、株主からの要望で壮大なムーンショット事業(※)への巨額の投資が促されたという背景がありました。
※ムーンショット:非常に困難だが、達成できれば大きなインパクトをもたらす壮大な挑戦のこと。
ただ、こうした動きはある意味、成功するかどうか分からない賭けの要素も大きかったわけです。そして、FRBがインフレ対策で狂ったように利上げしているいま、もはやハイリスク・ハイリターンなムーンショット事業に賭ける理由はなくなったといえるでしょう。
ちなみにそのようなムーンショット事業構想をもつ企業に対して巨額の投資をしてきたアーク・イノベーションという上場投資信託(ETF)は、去年2月にピークをつけて以降、時価総額の3/4以上を失っています。
このように、いまは壮大な挑戦に賭けるよりも、もっと短期的に予測可能で利益が見込めるプロジェクトのほうに資金が入っている状況です。
設備投資はまだ続いているが…
短期的な利益を重視する流れのなか、いまのところ設備投資や研究開発(R&D)への投資は伸び続けているとのこと。フィラデルフィア地区連銀が製造業を対象に先月行った調査では、より多くの事業所が省エネやコンピュータ以外の設備について増やすと回答したそうです。
昨今のエネルギー危機の影響で、省エネや製造設備などに投資するのは古くからある成熟した企業です。成熟企業(バリュー株)は設備投資によってしっかり短期的な利益を刈り取ることができるため、今後の伸びが期待できます。
Ryan Hammond, a U.S. equity strategist at Goldman Sachs, says this year the biggest cut in spending has been on buybacks as companies hoard cash, with capital expenditure, or capex, and research and development continuing to grow. Next year may be a different story, though, and he forecasts a sharp drop in the growth rate of capex.
The Wall Street Journal:Investors Rekindle Love Affair With Short-Term Success
しかし、来年は設備投資の伸び率が急激に落ちるだろうという予想もあります。なぜなら、いま設備投資に勢いがあるのは、過去の金融緩和で楽に手に入った資金を反映しているからに過ぎないからです。
一方、米政府によるマイクロチップ生産の拡大や、電気自動車向けの補助金などの保護政策、企業のサプライチェーンに関する課題など、アメリカ国内の設備投資を下支えする要因もたくさんあり、設備投資の動向については今後も要注目です。
これまでは、成功の保証がないような事業計画であって多額の資金が流れて株価が上昇するという構図でしたが、これからは全く違った流れになりそうです。市場に短期思考が復活しつつあるということは、いままでのようなハイリスク・ハイリターンの賭けではなく、より堅実で力強いバランスシートをもつ銘柄、余剰資金を配当金という形で株主に還元する銘柄が伸びることを表しているのでしょう。
最後にひとこと
あっという間の最終回でした。
WSJ会が初まった頃は人前で話すのもビビっていましたが、1年以上続けてきてすごく勉強になりました。最初はチンプンカンプンだった経済英語も、いつの間にか耳慣れてきてびっくりです。参加者の皆さんも、繰り返し耳にすることで馴染みがでてきたようであれば嬉しいです。
毎回お伝えしてきたように、WSJ誌は英語メディアの中でもかなり難易度が高い読み物です。それを逆手にとって、意味は全く分からなくて構わないからひたすら音読して英語脳を鍛える、という形にしました。(これはいまにして思うとあまり類を見ない試みだったかも!?)
また、WSJ会の本当の面白さは、何と言ってもホストによる経済解説だったと思います。なかなかこういう話を聞ける機会はないので、参加者の皆さんにとって英語以上の価値をお届けできたのではいかと思っております。
そんなWSJ会を有意義に感じていただけたなら、この上なく嬉しいです。
いままでご参加いただき、本当にありがとうございました!
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