4/19。
4/17に開催した「第8回 Wall Street Journalを読む会」の開催報告です。(正式名称:第8回 ウォール・ストリート・ジャーナル(英語版)を読んで、英文読解力と経済・金融・ビジネスリテラシーを向上させる会)
さらに参加者が増えて、総勢10名の賑わいとなり、全体的にちょっとレベルが上がってきた感があります。皆様、ご参加ありがとうございました!
※WSJを読む会についてはこちら。
前回に引き続き、玄人好みのゴリゴリの経済記事です。でも、実はそういう記事のほうが奥が深くて面白いのであります。
Yen Hits Lowest Level Since 2015, and Japan, U.S. Are OK With That
(注:有料記事なので先頭しか見られません)
1ドル125円の天井を突き破った円安
今回のタイトルは「円は2015年以来もっとも安値を記録したが、日本もアメリカもそれで構わない」というニュアンス。これは3月下旬の記事なのでそういう見出しになってますが、じつはその後さらに円安が進んで、現在は2002年以来(20年ぶり)の安値を更新している状態です。
いままで似たような円安状況のときにたびたび日米双方で大騒ぎになっていたのに、今回の急激な円安には無反応なのは何故なのでしょうか?
参考までに、トランプ元大統領が円安のときどんな剣幕だったか思い出してみましょう↓
In the past, a sharp fall in the yen would likely have drawn outrage from U.S. politicians and companies. When he was in office, President Donald Trump frequently expressed dissatisfaction with other countries’ weak currencies.
“They play the devaluation market, and we sit there like a bunch of dummies,” Mr. Trump said shortly after taking office, singling out Japan, China and Germany.
The Wall Street Journal:Yen Hits Lowest Level Since 2015, and Japan, U.S. Are OK With That
まあ、要するに日本その他の通貨安の国々を名指しして、めちゃくちゃ怒っていたわけです。
2022年4月19日現在のドル円は128円ですから、トランプ元大統領が日本に憤慨していた頃よりもっともっと円安になってます。ちなみに、半年前のドル円相場は1ドル110円台だったので、短いあいだに急激に円安が進んだ形です。
つまり、今のほうがどえらい事態になってるのは明らかなのに、アメリカから未だになんにもお咎めなしでシーンとしてるのはどういうことでしょう。しかもそれだけでなく、日銀のほうも堂々と円安を志向する発言をしたりしてます。(で、3月下旬はこれが引き金になって、長年超えることのなかった1ドル125円の壁をぶち破る事態になりました)
円安の背景にアメリカのインフレ抑制政策
日米双方が今回の急激な円安を容認(?)しているのにはいくつか理由があります。そもそも、円安ドル高が進む主な理由は「日米の国債の金利差」だそうですが、そう言われても素人にはピンと来ない。。。だけど、コロナ問題から時系列的に見ていくと分かりやすいので、順番に並べてみます:
- パンデミックでアメリカが大規模な金融緩和を実施→多額の給付金がバラまかれた。
- 給付金で潤ったアメリカ経済は活気づいた!→でも勢い余って物価が上昇しインフレ状態に。
- FRBはインフレ対策として「金融引締をやる」と言いつつ、やるやる詐欺で実施を引き延ばす。
- その間にさらに物価上昇し、アメリカはついにインフレ率8%に。(本来は2%前後が望ましい)
- 2022年3月、FRBが重い腰を上げて、やっと金融引き締めがはじまった。
- 金融引き締めとは、具体的にはFRBが政策金利を引き上げること。
→金利が上がると経済がスローダウンするので、徐々にインフレも落ち着く(予定)。 - 金利が上がると、リスクのある金融商品よりも、リスクの少ない国債や預貯金の方が相対的に魅力が増す。
- 人気になったアメリカの10年国債の金利はなんと2.5%!(一方、日本の10年国債の金利は0.25%…)
- じゃあ、円を売ってドルに替えてアメリカの国債を買おう、という話になる。
- 結果、人気のなくなった円がバンバン売られて円安が加速する。
。。。ということだそうです。
だいぶ端折って書いたけど、それでも因果関係ややこしい。。。いずれにしても、今回の円安もやっぱり「日米の国債の金利差」が原因であることには変わりはないそうです。
円安を歓迎するアメリカの事情
そこで本題に戻ると、アメリカがなぜ今回の円安を容認しているのかがよく分かります。
But now, a strong dollar pushes down the cost of imported goods and tamps down inflation, a top concern for the Biden administration heading into fall midterm elections.
The Treasury Department’s most recent foreign-exchange report, released in December at a time when the yen was already weakening, expressed no concern about the moves.
The Wall Street Journal:Yen Hits Lowest Level Since 2015, and Japan, U.S. Are OK With That
円安容認の最大の理由は、現在アメリカ側が激しいインフレに陥っていること。今のような円安で日本からの輸入品(例えば自動車など)の価格が下がることは、インフレ抑制に繋がるという意味で好都合なのだとか。また、インフレ抑制に取り組んでいるバイデン大統領が秋の中間選挙を控えていることも、円安容認を後押ししているようです。
昨年12月の米財務省の為替レポートでは、当時すでに円安傾向が見られていたにもかかわらずスルーされたというから、年末の段階からアメリカ側はわざと見て見ぬフリしつづけているというわけですね。
円安でも開き直っている日本の事情
一方の日本はどうか?まず国や輸出企業の立場から言うと、円安はすごく儲かるので美味しい!のだそうです。今回のWSJ記事に書いてあったけど「もし1ドル115円から125円にまで円の価値が下がった場合、日本企業の集合的な営業利益は1兆5000億円近くアップする」とのこと。つまり日本からの輸出を手掛ける大企業は、今回の円安でみんなウハウハ状態になっているというわけです。
なぜ円安になると日本の輸出企業がそんなに儲かるのか?についてはカシワ先生から詳しく紹介があったので省きますが、とにかく今回の円安で見込まれる日本の輸出企業の業績UPはすさまじいものがあるらしい。。。
だけど良いことばかりではありません。日本が輸出で大儲けできるということは、逆に輸入にとっては大打撃ということです。特に原油や天然ガスなどの輸入は非常に高くつきます。結果として、ガソリン代や電気代が上がるという形で日本の消費者にしわ寄せが来るのは見ての通り。もちろん、食料品などの値上げも例外ではありません。それに、企業が業績UPしたからって、従業員の固定給が上がるわけじゃないし。。。
つまり、円安が進むと日本の輸出企業は儲かるけど、日本の庶民には恩恵よりもマイナス面のほうが大きい、ということです。Σ(゚Д゚lll)
あらためて、そういう目で今回の記事の見出しを読み返してみるとコトの重大さが分かるというか、少なくともヒトゴトではないという事が伝わってくるのでした。
次回のWSJ会は5/15開催予定です!
遊びに来てね〜♪
↓↓↓↓
5/15開催分:
第9回 ウォール・ストリート・ジャーナル(英語版)を読んで、英文読解力と経済・金融・ビジネスリテラシーを向上させる会
にほんブログ村
「ひとりごと」ランキング参加中です。ポチッと応援お願いします♪
コメント