7/18。
7/17に開催した「第11回 Wall Street Journalを読む会」の開催報告です。(正式名称:【初参加無料】第11回 お金の知識が身につく英字新聞を読む朝会!英語脳を鍛えよう!)
いつもより少人数でしたが、全員リピーターさんという濃い集まりに。解説時間を長くとって座談会も盛り上がりました!
※WSJを読む会についてはこちら。
今回の記事:米国、欧州、日本…状況は異なるものの、中央銀行の舵取りが難しくなっています。失敗すれば、証券市場や実体経済への影響は避けられない、というグローバルなお話。
The Lords of Money Pose Massive Threats to Markets
(注:有料記事なので先頭しか見られません)
3つの中央銀行、金融政策に矛盾?
前回に引き続き、マッキントッシュ先生のコラムです。今までアメリカの記事が中心でしたが、今回はヨーロッパと日本も含めて世界全体を俯瞰できる記事でした。出だしはこれ:
Think the Fed’s job is hard? At least the U.S. Federal Reserve can concentrate on fighting inflation. In Japan and Europe, the central banks are battling the markets, not merely price rises. That’s leading to some very strange, even contradictory, policies.
The Wall Street Journal:The Lords of Money Pose Massive Threats to Markets
海外の読みものは冒頭に結論が書いてあるので最初の段落は要チェックです。ここでは、アメリカ、日本、ヨーロッパの3つの中央銀行の概況を紹介したうえで、それらが「いくつかの非常におかしな、矛盾でさえある金融政策に繋がっている」とあります。各国とも、一体どのような矛盾を孕んでいるのでしょうか?
ちなみに中央銀行というのは、日本でいうと日銀に相当する銀行のことで、国の通貨を発行できる特別な存在です。アメリカの中央銀行はお馴染みのFRB、ヨーロッパの中央銀行はECBになります。並べるとこんな感じ:
- 日本 → Bank of Japan (日銀)
- アメリカ → Federal Reserve Board (FRB)
- ヨーロッパ → European Central Bank (ECB)
では、各国の状況をみてみましょう。
アメリカ:データドリブンが裏目に出るFRB
ひとつめはアメリカの中央銀行、FRBに関する懸念です。マッキントッシュ氏は、いまFRBがインフレ対策を徹底的にやり尽くすことの結果として、今度は行き過ぎた景気後退に見舞われる恐れがあると指摘しています。
その理由は、FRBの金融政策が「データドリブン主義」だから、というもの。
あれ?それってデータに基づいて的確に判断するってことでしょ?すごく賢い方法じゃないですか…、と思ったら、じつはデータドリブン主義には落とし穴もあるそうです。データというのは過去に蓄積された事実なので、それを元に判断すると、未来が過去の延長にあるときは非常にうまくいくけれども、前例のない事態が次々に起こって先行きが不透明なときにはあまり役に立たないのだとか。
パンデミック、インフレ、ウクライナ戦争。。。といった未曾有の出来事が続くいま、FRBは手探りでの舵取りを余儀なくされています。現在、FRBの目下の課題はインフレ対策で、加熱した経済を冷ますために金融引き締め(米国債の利上げ)を実施しているところですが、パウエル議長も「どのくらいの引き締めがインフレ抑制に妥当なのかは試しながら見ていく」という趣旨の発言をしています。試しながらということは、ときに経済を必要以上に冷ましすぎて行き過ぎた景気後退を招く可能性も十分にあるということです。
マッキントッシュ氏はそのことについて「FRBは、何かがぶっ壊れるまで金融引き締めを続ける気だから楽観視しないように」と、相変わらずの辛口評価でした。(ちなみに、経済の何がぶっ壊れるのか?についてはホストから詳しい解説がありました)
ヨーロッパ:加盟国の経済レベル格差で苦境に立つECB
次はヨーロッパの中央銀行、ECBが抱える問題です。ヨーロッパでは、様々な国が統一通貨ユーロを使っていますが、そのユーロを担っているのがECBになります。しかし、ひとつの中央銀行が経済レベルの異なる国々をまとめつつ通貨の安定を図る、というのは至難の業であるようです。
個別の問題でいうと、いまはイタリアの財政がややマズイ状態になってきており、先月ECBで緊急会合が開かれたそうです。このようなとき、ユーロ加盟国同士で問題解決にあたるわけですが、簡単にいうと「経済に余裕のあるリッチ国が、余裕のない貧乏国にお金を融通する」という形になります。おおお、なんて素晴らしい仕組みなんだ!と思ったらそうでもなくて、まあまあ政治的にドロドロした綱渡りモードだったことが判明。
具体的にいうと、裕福な北側諸国(例えばドイツ・フランスなど)は、経済がヤバい国にお金を貸す時にいろいろと厳しい条件をつけるそうです。たとえば2009年にギリシアが財政破綻するという大事件がありましたが、あの時はEUやIMFから金融支援があったものの、増税や年金改革などかなり厳しい緊縮財政を求められました。ギリシアにとっては非常にツライ時代だったはずです。
なので、お金のない国が喜んで金融支援を受け入れるほど話は単純ではありません。むしろ、(ギリシアのような辱めを受けたくないために)問題が炎上するまで先延ばしする傾向がある、というのがマッキントッシュ氏の指摘でした。今回のイタリアがそうなるという訳ではないですが、火種のひとつであることは確かです。
ちなみにヨーロッパ全体でもインフレは進行しています。なのでECBとしては「イタリアが沈まないよう救済しつつ、他の国々の経済が加熱しすぎないように冷ます」というアクセルとブレーキを両方踏むような舵取りで苦慮している様子がうかがえました。
日本:物価対策よりも景気を良くしたい日銀
日本の中央銀行である日銀はどうでしょうか。日本もあからさまに物価上昇してきていますが、アメリカやヨーロッパと異なるのは「日本はインフレ気味でも景気が悪い」という残念な状態です。海外ではFRBやECBが金融引き締めでインフレを抑え込もうとするなか、日銀はまだまだ金融緩和を続けて景気をなんとかしたい、という真逆の路線をいっています。
そんな日本は、どうやら海外の投資家から「いやいや日本もインフレなんだから、国債の利回りをもっと高くしてインフレ抑制すべきでしょ」と思われているらしい。ですが、マッキントッシュ先生はそんな短絡的な見方をしているわけではありません:
Japan has the best case of any major developed country for easy monetary policy. While inflation is above 2% for the first time since 2015, it is almost all due to higher global energy and food prices, and there’s little pressure for higher wages. Exclude fresh food and energy, and annual inflation was 0.8% in April, hardly a reason to panic.
The Wall Street Journal:The Lords of Money Pose Massive Threats to Markets
このとおり「日本は、主要先進国の中でもっとも金融緩和に適した国である」と書かれており、これはいまの日銀の路線とも一致した見解です。その理由ですが、
「日本のインフレ率は2015年以降初めて2%を超えているが、それは世界的なエネルギー・食料価格の高騰にほぼすべての原因がある。しかも、賃上げの圧力は少ない。(中略) 日本がパニックに陥る理由はほとんどない」
とのこと。言われてみればたしかに全部そのとおり。
正直、日本国内の報道だけ見ていると、止まらない物価上昇で庶民の暮らしが圧迫される恐ろしさを感じますが、海外から日本を見ると「この程度のインフレ、アメリカの騒動に比べれば全然大したことないよ」と言われているわけです。
とはいえ、日銀が海外投資家の圧力に屈して、ある日突然「金融緩和→金融引き締め」に転じることはあり得ないことではないと指摘されていました。もしそうなった場合、日本が市場に与える影響は計り知れないから、投資家のみんなは用心するように!と結んであったのですが、はたしてどうでしょうか??
まとめ
今回の記事はアメリカだけでなく、ヨーロッパや日本までカバーされていたのが良かったです。内容はおもに、各国の中央銀行が国債の金利をどうするか?という難しいテーマだったのですが、そういう話はホストの経済解説にお任せするとして。。。(゚∀゚)
個人的には、いまの日本のポジションを冷静に見る目が持てたのが一番の収穫でした。
次回のWSJ会は8/21開催予定です!
遊びに来てね〜♪
↓↓↓↓
8/21開催分:
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